子どもと描く「きもちの色」工作
子どもと描く「きもちの色」工作
子どもたちの感情は日々変化し、その表現も様々です。この工作は、子どもたちが自身の内にある「きもち」を、自由に色や形に表現する手助けとなります。特別な材料や技術は一切不要で、ご家庭にある画材を使って、短時間で取り組むことができます。この活動を通して、子どもたちは感情には様々な種類があること、そして同じ感情でも人によって感じ方や表現方法が違うこと、つまり「感情の多様性」について自然と触れる機会を得られます。自分自身の「きもち」を自由に表現することから、「自分らしさ」を肯定的に捉えるきっかけにも繋がるでしょう。
この工作で学べること
- 感情には様々な種類があること
- 同じ感情でも人によってイメージする色や形が違うこと(多様性)
- 自分の感じたことを自由に表現すること(自分らしさ)
- 色の変化や組み合わせを楽しむこと
用意するもの
- 画用紙やコピー用紙など、絵を描ける紙:数枚
- 絵の具セット、またはクレヨン:どちらか一方、または両方
- (絵の具を使う場合)パレット、筆、水、雑巾:牛乳パックや食品トレイをパレット代わりにしても良いでしょう
対象年齢
3歳頃〜小学校低学年頃まで
感情の言葉が出始める3歳頃から、自分の気持ちを言葉で表現することが難しくても、色や形なら表現しやすい年齢のお子さんにおすすめです。小学校低学年のお子さんであれば、より複雑な感情や、色と感情の繋がりについて深く話し合うことも可能になります。
作り方・遊び方
この工作は、決まった完成形を目指すものではありません。子どもがその時々の感情と向き合い、自由に表現する過程を大切にします。
- 準備をする
- テーブルに新聞紙などを敷き、画材と紙を用意します。絵の具を使う場合は、パレットに絵の具を準備し、水の入ったコップなども置いておきましょう。
- 今日の「きもち」に耳を傾ける
- 「今日はどんな気持ちかな?」と優しく尋ねてみましょう。「嬉しい気持ち?」「楽しい気持ち?」「ちょっと悲しいかな?」「なんだかモヤモヤする?」など、いくつかの感情の言葉を提示しても良いでしょう。もし言葉にするのが難しければ、「体はどんな感じがする?」など、感覚に焦点を当ててみても構いません。
- 「きもちの色」を探す
- 感じている「きもち」が、もし色だったら何色に見えるか、子どもに聞いてみましょう。「嬉しい気持ちは、どんな色かな?」「怒っているときは?」子どもが答えた色を否定せず、「へえ、この色なんだね」と受け止めます。もし特定の色が思い浮かばなくても、「好きな色を使ってみようか」「この色を見てどんな気持ちになる?」などと声かけをして、自由に色を選ばせるように促します。
- 「きもちの色」を描く
- 選んだ色を使って、自由に紙に表現してもらいます。絵でも、模様でも、塗りつぶすだけでも構いません。「この色をどんな風に紙につけたい?」と、筆の使い方やクレヨンの持ち方、色の混ぜ方などを一緒に試しながら、描画を楽しみましょう。複数の色を使ったり、色を混ぜたりするのも良いでしょう。
- 描いた絵について話す(任意)
- 絵が完成したら、「この絵の、この色はどんな気持ちの時に描いたの?」などと尋ねてみましょう。子どもが言葉にできなくても、「ここに力強い線があるね」「いろんな色が混ざってて面白いね」など、絵の具体の要素について話すことで、子どもは自分の表現が受け止められたと感じるでしょう。
- 繰り返し楽しむ
- 日によって、子どもの気持ちは変わります。数日後、また別の「きもちの色」を描いてみることで、感情の多様性や、気持ちは変化していくものであることを感じ取ることができます。
多様性テーマに関する声かけヒント
この工作は、描くことそのものよりも、「自分の内側にある感情に気づき、それを表現してみる」「自分以外の人の感情や表現にも目を向ける」「人それぞれ感じ方や表現方法が違うことを知る」といった多様性に関する気づきに繋がる声かけが重要です。
- 「この絵の色(または形)は、どんな気持ちに見える?」
- 子どもが描いた絵について、具体的な色や形に触れながら尋ねることで、自分の表現を言葉にする練習になります。
- 「嬉しい気持ちは何色かな?どうしてその色に見えるのかな?」
- 特定の感情と色を結びつける問いかけです。色を選ぶ理由を考えることで、内省を促します。
- 「もし、パパ(またはママ)が同じ気持ちだったら、どんな色を描くかな?予想してみようか。」
- 自分以外の人の感情や表現について考えるきっかけを与えます。人それぞれ感じ方や表現が違うことに気づかせます。
- 「この色とこの色を混ぜると、新しい色になったね。色も一つだけじゃないんだね。」
- 色の混色を通して、物事が多様であること、変化することの面白さを伝えます。
- 「みんな、同じ『嬉しい』気持ちでも、見える色や形は違うんだね。それでいいんだよ。」
- 人それぞれ違いがあること、そしてその違いが自然で、受け入れられるべきものであることを肯定的に伝えます。
- 「きもちの色は、好きな色、描きたい色でいいんだよ。どんな色を使っても間違いじゃないんだ。」
- 自分らしさの表現を肯定し、自由な発想を促します。
まとめ
「きもちの色」工作は、身近な画材で手軽に始められる、子どもの感情の多様性や自分らしさといったテーマに触れることのできる活動です。完成した絵の上手さや正確さではなく、子どもが自分の内面と向き合い、自由に色や形に表現する過程、そしてそれについて保護者と話し合う時間を大切にしてください。短い時間でも、子どもたちの心の中に多様性を受け入れる種を蒔く、価値ある時間となるでしょう。